重症熱性血小板減少症候群は恐ろしい感染症です。

「マダニ」にかまれて死亡者続出!

死亡者が続出している「マダニ」の被害

愛媛大生マダニ被害か 上島で実習の2人発熱
3月下旬に愛媛上島町で島の測量実習に参加した愛媛大の学生ら11人のうち3人がダニのような生き物にかまれた可能性があり、2人が発熱して病院を受診していたことが6日、分かった。愛媛大によると、重い症状は出ていないが、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)への感染のケースも想定して危機管理室で情報収集している。

今までは高齢者がほとんどでしたが、大学生でも感染疑い!
2015/04/07

 

「マダニ」に咬まれ死亡者が続出しています。

一部の「マダニ」がSFTSV(ウイルス)*1 を保有しています。その「マダニ」に咬まれると重症熱性血小板減少症候群(SFTS)*2 を発症する危険性があります。病状が重いと入院・治療が必要です。最悪の場合は死に至ります。

*1 SFTSV(ウイルス)とは 重症熱性血小板減少症候群ウイルスのことです。
(Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus)

*2 SFTSとは 重症熱性血小板減少症候群のことです。
詳しくはこちらです。

マダニとマダニに吸血される動物との間でSFTSVが保持される仕組みが確認されています。ヒトはSFTSVを保有するマダニに咬まれると感染し発症しますが、動物は咬まれても発症しないがことが分かっています。

2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに感染していたことが初めて報告されました。それ以降他にもSFTS患者が確認されるようになりました。

SFTSVに感染すると
6日から2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)。その他には頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こし、白血球減少、血小板減少、AST・ALT・LDHの血清逸脱酵素の上昇が認められ、血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがあります。
致死率は6.3%から30%と報告されています。


-目次-
SFTSVが確認された地域
SFTSの発症地域
年齢別発症数
月別発症数
「マダニ」の感染経路
「マダニ」の生息場所
フタトゲチマダニ
SFTSの感染予防
関連情報
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SFTSVが確認された地域

2013年から開始された厚生労働省の総合的研究では、SFTSVが九州から北海道の26道府県でマダニのウイルス保有が確認されています。

・調査数
マダニ(18種4,000匹以上)

・対象マダニ
タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ(下記写真1参照)、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ

・SFTSVが確認された都道府県(26)
-西日本-
鹿児島、宮崎、福岡、熊本、徳島、愛媛、高知、島根、山口、岡山、兵庫、三重、滋賀、京都、和歌山、岐阜、福井の各府県です。
-東日本-
長野、静岡、山梨、栃木、群馬、福島、岩手、宮城県、北海道の各道県です。

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SFTSの発症地域

これまでに患者の発生した自治体は、近畿・中国・四国・九州の13県
兵庫、島根、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の各県です。

2014年8月現在、発症地域は西日本がほとんどです。ウイルス保有が東日本でも確認されているため東日本での発症のリスクがあり注意が必要です。

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年齢別発症数

賢い主婦の方へ、気になるデータです。特に子供たちの発症数ですが、現在のところほとんど報告はありません。
2013年からSFTSの調査が本格的に開始。その為それ以前の発症数の正確なデータはありません。又、発症しても医療機関に報告のないものはカウントされません。数は不明ですが、カウントされていないケースもあるものと推測できます。

年齢生存例死亡例合計
~20代101
30代000
40代202
50代 426
60代21526
70代17421
80代121224
90代235
592685
2013/01-2014/07のデータ
(国立感染症研究所ホームページより)

 

「マダニ」咬まれ発症した報道の一部を紹介します。
・2013年8月の紀伊民報より
和歌山県日高郡の80歳男性。
農作業中に臀部を「マダニ」にかまれて、発熱、腹痛、下痢の症状。近くの病院で血液検査の結果「SFTS」と診断。現在回復。 6月下旬にも日高郡の70歳代の女性が農作業中に「マダニ」の被害。

・2014年8月山陽新聞より
岡山県備前保健所管内に住む60歳代の男性が「マダニ」にかまれて、発熱、腹痛、下痢の症状。現在快方に向かっている。 岡山県での感染確認は4人目。

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月別発症数

2013年1月から2014年7月までの発症数(国立感染症研究所ホームページより)
ご覧の通り春から秋にかけて発症数が増加しています。野山に出かける機会が増えていることが原因だと考えられます。
月別発症数

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「マダニ」の感染経路

SFTSVの感染経路は2つあることが分かりました。
1. SFTSV保有の「マダニ」からヒトに感染する。

2. SFTSVに感染したヒトの体液、血液からヒトに感染する。

その他で、気になる感染経路ですが、
・動物の体液、血液からヒトに感染するかどうかは不明です。
・親マダニから子マダニにSFTSVとして引き継がれるかどうかも不明です。

調査の中で、
植生マダニの調査(植物に付着し、動物やヒトを待ち構えているマダニ)と シカに付着しているマダニの調査(「マダニ」18種4,000匹以上)の調査で分かったこと
複数の「マダニ」タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニから、SFTSVが検出されました。
保有率は5~15%程度とマダニの種類により違いがありました。

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「マダニ」の生息場所

「マダニ」の生息場所とか危険な季節を知るということは大変重要なことです。
生息場所は、
野山の草むらの葉っぱの表とか裏に生息しています。

季節的には春から秋が危険。
この時期は様々な行事があります。いくつか挙げてみます。
花見、キャンプ、夏祭り、バーべキュー、野山の散策、花火大会、紅葉狩り、キノコ狩り、栗拾い、渓流遊び、登山、ハイキング、オフロードスポーツ、ゴルフ、犬猫の散歩、猟犬を伴った狩り等。こうやって一年を通してみると、野山を訪れる機会はかなりあります。

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フタトゲチマダニ

(SFTSV保有可能な「マダニ」)
写真1  フタトゲチマダニ(国立感染症研究所ホームページより)
フタトゲチマダニ

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SFTSの感染予防

SFTSの感染予防は野山に近づかないことが最善ですが、社会生活をしている以上は実質的には無理だと思います。2014年9月現在、薬やワクチンがありません。近い将来、薬やワクチンが開発・提供されると考えています。

そのSFTSの感染予防の方法は薬やワクチンを使わない方法です。2つあります。ご紹介します。
服装で対応する、防虫繊維と忌避剤で対応する方法です。

1. 服装で対応する

服装を以下(図2)のようにする。

図2 (国立感染症研究所ホームページより)

ポイントは5か所です。
(1) 帽子と靴の着用
必ず着用する。
(2) 首
タートルネックの上衣かタオルを首に巻く。
(3) 腰回り
上衣と下衣の間に隙間を造らない。
(4) 手首
上衣と手袋の間に隙間を造らない。
(5) 足首
靴下と下衣の間に隙間を造らない。

サンダル、半袖、短パン等。肌の露出の多い服装は大変危険です。

2. 防虫繊維と忌避剤で対応する

虫刺され対策は2通りあります。
刺されないようにする繊維と薬剤です。

-防虫繊維-
便利な防虫繊維があります。「スコーロン」と言います。
アイテム数も多くあり、下着から靴下までほとんど揃っています。 マダニにも効果があることが試験で証明されています。

「スコーロン」のメリット
(1) 防「マダニ」効果がある。
(2) 洗濯耐久性があり、洗濯を繰返しても防虫効果が持続することです。
(3) 「UVカット+吸汗速乾」機能。

アース製薬と帝人グループの共同開発です。


夏場は高温・多湿です。帽子、手袋、靴下、靴、更に皮膚の露出を防ぐ対策をするということは大変厳しいですね。「スコーロン」は「UVカット+吸汗速乾」機能がりありがたいです。

-忌避剤-
忌避剤(きひざい)とは有害動物に忌避行動(きひこうどう)をとらせる薬剤のことです。

防「マダニ」忌避剤は現在のところありません。近い将来開発・提供されると思います。
少し意味が異なりますが、付着したものを取り除く、マダニとりピンセットはこちら。

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関連情報

「マダニ」を媒介した感染症

「マダニ」の吸血で媒介される感染症の代表例を紹介します。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)以外にもいくつか報告されています。

日本紅斑熱
感染したときの症状は、かゆみのない発疹や発熱など。速く医療機関にかかれば大事には至らないが、放置すると高熱を発し、そのまま倒れてしまうことがある。治療は点滴と抗生物質の投与。咬傷が見当たらなくても、医師にキャンプやハイキングなどに行ったと伝えておけば、発見が速くなり、治療効果が期待できる。

ライム病
ノネズミやシカ、野鳥などを保菌動物とし、マダニ科マダニ属 Ixodes ricinus 群のマダニに媒介されるスピロヘータの一種、ボレリア Borrelia の感染によって引き起こされる人獣共通感染症のひとつです。

回帰熱
ヒメダニ属、マダニ属に媒介されるスピロヘータ科の回帰熱ボレリアによって引き起こされる感染症。発熱期と無熱期を数回繰り返すことからこの名がつけられた。2013年に国立感染症研究所でライム病が疑われた患者血清800検体の後ろ向き疫学検討を行ったところ、回帰熱が確認されました。

Q熱
山などに行った後に、皮膚などに違和感を覚えたり、風邪のような症状を覚えたら、この病気の危険性あり。日本紅斑熱と同様に、キャンプやハイキングなどに行った後に何らかの症状が出た場合は医療機関で診察を受けることをおススメします。

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「マダニ」咬まれたら

マダニ類の多くは、ヒトや動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、長時間(数日から、長いものは10日間以上)吸血します。咬まれたことに気がつかないこともあります。
血を吸われている時は、無理に引き抜くとマダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまったりする恐れがありますので、医療機関で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。また、マダニに咬まれた後、数週間程度は体調の変化に注意をし、発熱等の症状が認められた場合は医療機関で診察を受けて下さい。
上でもお話しした、「マダニ」のSFTSVの保有率は5~15%程度とマダニの種類により違いがあり、全ての「マダニ」がSFTSVを保有しているわけではありません。冷静に対応してください。

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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
(Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus)
2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに罹患していたことが初めて報告され、それ以降他にもSFTS患者が確認されるようになった。 SFTSV(ウイルス)に感染すると6日から2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こす。
検査所見上は白血球減少、血小 板減少、AST・ALT・LDHの血清逸脱酵素の上昇が多くの症例で認められ、血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがある。
致死率は6.3%から30%と報告されています。
感染経路はマダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心だが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されています。

SFTSは2011年に中国で発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症です。国内で確認されたSFTSVとは異なることが確認されています。従って中国から持ち込んだものではありません。

治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはない。(国立感染症研究所ホームページより)

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最後までご覧いただきありがとうございました。