手足口病を正しく理解して健康な家族を

手足口病を正しく理解して治療

手足口病(てあしくちびょう)

手足口病(てあしくちびょう)は、口腔粘膜、手や足などに現れ、水疱性の発疹がでるのが主な症状です。急性のウイルス感染で、幼児を中心に夏に流行します。
コクサッキーウイルスA16型、A10型、エンテロウイルス71型(EV71)のウイルスが原因です。極まれに重症化することが確認されています。

手足口病は4歳位までの幼児を中心とした疾患であり、2歳以下が半数を占めるが、学童でも流行的発生がみられることがあります。学童以上の年齢層の大半は 既にこれらのウイルスの感染(不顕性感染も含む)を受けている場合が多いので、成人での発症はあまり多くありません。
過去にEV71による大きな流行が起こり、多数の重症例と急性死亡例の出たことが今までに世界中で報告されています。その一部を紹介します。

死亡例(大阪市)

9カ月女児
兄と姉が手足口病に罹患し、自身も7月11日から発熱と発疹が出現したが、一般状態は良好であった。14日午後からぐったりし、近医を受診した。呼吸困難がみられたためY病院へ入院し、気管内挿管と人工呼吸を受けたがショック状態を脱しないため当院救急救命センターへ転送された。入院6時間後に死亡した。胸部レ線で肺水腫がみられたが心拡大はなく、心臓超音波検査では心筋の収縮不全がみられた。胸部のみの剖検が許可されたが、明らかな心筋炎は認められなかった。

15カ月男児
8月17日手足口病に罹患したが、元気にしていた。21日未明から元気がなかったが、意識は清明であった。21日朝、近医を受診したが、医院の前で嘔吐後、心肺停止となった。当院へ搬送され蘇生されたが、入院4時間後に死亡した。髄液細胞増多(106/3、単核球優位)がみられた。

5カ月男児
9月25日から発熱したが、元気にしていた。28日朝から多呼吸・頻脈で視線が合わず、急病診療所を受診、二次後送病院で気管内挿管を受け、当院へ転送された。治療に反応せず12時間後に死亡した。髄液細胞増多(1220/3)、肺水腫が認められた。また、入院後肝機能異常、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの多臓器不全の所見がみられたが、二次的な事象であろうと考えられた。

上記死亡例は国立感染症研究所のHPより/原文のまま紹介


-目次-
手足口病の発症地域
手足口病の発症時期
手足口病の感染経路
手足口病の予防・発症対応など

 

手足口病の発症地域

地域に隔たりは無いようです。
世界各国で感染の報告があります。

年 月国 名報 告
2010年4月カンボジア52名の小児が死亡
2008年5月中国25,000人の感染者
2008年4月中国安徽省EV71により19名の児童が死亡
1998年台湾78名の小児が死亡
1978年ハンガリーEV71による死亡
1997年マレーシア8名の小児が死亡
1997年7月大阪EV71で3名死亡
1975年ブルガリアEV71による死亡
* EV71はエンテロウイルス71型

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手足口病の発症時期

夏季が中心です。秋から冬にかけても多少の発症の報告が見られます。

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足への感染例   国立感染症研究所のHPより

 

手足口病の感染経路

ヒト-ヒト伝播は主として咽頭から排泄されるウイルスによる飛沫感染でおこるが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などがあります。
便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消失した患者も2から4週間 にわたり感染源になります。腸管で増殖したウイルスが血行性に中枢神経系(EV71)、心臓(CA16)などに到達すると、それらの臓器の症状を 起こします。

3から5日の潜伏期をおいて、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2から3mmの水疱性発疹が出現します。
非常に稀ですが、髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系合併症の他、心筋炎、AFPなどを発症することもあります。EV71による場合には、中枢神経系合併症に注意する必要があります。

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手足口病の予防・発症対応など

予防としては特別行うことはありません。患者に近づかない、手洗いの励行などを行う。患者あるいは回復者に対しても、特に排便後の手洗いを徹底させる程度です。

・発疹とかかゆみの場合
抗ヒスタミン剤の塗布を行うことはあるが、副腎皮質ステロイド剤な どの必要はありません。

・口腔内には
刺激にならないよう柔かめで薄味の食べ物を勧めてください。何よりも水分不足にならないようにすることが最も重要です。

・発熱の場合
通常解熱剤なしで経過観察が可能です。抗生剤の投与は意味がありません。

・元気がない、頭痛、嘔吐、高熱、2日以上続く発熱などの場合
髄膜炎、脳炎などへの進展を注意してください。

それでも不安な場合は医療機関に相談してください。手足口病の原因ウイルスに対するワクチンは開発されていません。

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